機能や形状
材質や地域
本作は、魯山人が晩年精力的に取り組み、多くの優品を生み出した備前による、大ぶりで堂々とした姿が印象的な徳利である。豊かな量感をもつ胴から、すっと立ち上がる頸、わずかに反る口縁へと続く流れは実に美しく、素朴な備前の趣の中にも、魯山人ならではの洗練された造形感覚が息づいている。胴の一部にはわずかな押し込みが施され、その柔らかな変化によって手取りは非常によく、手のひらに自然と馴染む。単なる左右対称の器形にとどまらず、実際に用いることまで考え抜かれた造形へと昇華されている点も見逃せない。最上質の備前土による器面には、降りかかった胡麻や桟切、窯変、石はぜなどが複雑にあらわれ、備前焼ならではの豊かな景色を生み出している。焼成前には理想とする景色を求めて綿密に窯詰めが行われるものの、炎や灰の流れによって生じる自然の変化を完全に制御することはできない。その偶然性がもたらす唯一無二の表情こそが備前焼最大の魅力であり、本作にも自然と人の技が織りなす奥深い焼き上がりが見事にあらわれている。また、高台も見どころの一つとなっている。端正で深く切られた糸底には、控えめながらも鮮やかな緋襷の景色があらわれ、その傍らには「ロ」のサインが絶妙な大きさで刻まれている。普段は目に触れることの少ない高台裏にまで一つの画面を構成するかのように美意識を行き届かせた点にも、魯山人の並々ならぬこだわりがうかがえる。豊かな備前の土味を基調としながら、胡麻や桟切、窯変、石はぜが織りなす変化に富んだ景色、手取りの良さを追求した造形、さらには高台裏にまで宿る美意識を兼ね備えた本作は、備前焼の魅力と魯山人の美意識とが高い次元で融合した、堂々たる風格を備える逸品である。高台脇に釘彫サイン「ロ」。
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