本作は、黒塗の椀地に金と銀の彩色で日と月を表現した、魯山人ならではの象徴的な意匠を 持つ一椀である。 漆黒の器面に輝く金の「日」と、静かに寄り添うような銀の「月」。その対照的なモチー フは、時間の流れや陰陽の調和といった、東洋的な宇宙観を想起させる。形状は潔く端正でありながら、塗りの質感と意匠の配置が織りなす緊張感が、器としての存在感を際立たせている。 料理を盛ってこそ真価を発揮する魯山人の器にあって、この日月椀は“空でも美しい”と評される稀有な存在である。こうした日月椀は、かつて一流の料亭が“もてなしの象徴”として用いてきた背景を持つ。今日においても、この椀を所蔵し用いることが、料亭の美意識と格の高さを静かに物語る ひとつの指標とされている。
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