機能や形状
材質や地域
魯山人の篆刻は、中国古印の研究を基礎としながらも、日本的な感覚と近代的な造形意識を融合させた点に大きな特色がある。漢印に倣った重厚な構成から、自由で動きのある書風まで幅広く展開し、鋭く直截な刀痕によって文字に強い生命感を与えている。また、印面だけでなく、印材そのものの色味や質感、形状までも一つの造形として捉え、小印一顆の中に凝縮された美を追求した。本作は、1920〜1930年代に制作された石印で、葉蝋石系印材による作品と思われる。淡い生成り色の石肌と、側面に施された鮮やかな朱色の対比が印象的であり、魯山人らしい大胆な色彩感覚と造形意識がうかがえる。印文は篆書で刻されており、書家としての古典篆刻への深い理解と、魯山人独自の美意識が感じられる。印文の「汪泉」は、「汪」が水の広く深く満ちたさま、「泉」が清らかに湧き出る水を意味することから、豊かに湧き出る泉、あるいは深く尽きることのない清泉を想起させる語である。さらに発展して捉えれば、知性や才気、徳が尽きることなく湧き出るさま、また心の奥行きや精神の豊かさを象徴する佳語として読むこともできる。鋭い刀致のなかに、簡潔でありながら豊かな余白感覚が備わり、魯山人らしい洗練された気品を漂わせている。自然な石肌の景色や素材感までも作品の一部として取り込み、書・篆刻・工芸を横断した魯山人芸術の本質が、小さな印面の中に凝縮された優品である。w3.6 × h5.8cm、印側面に彫りサイン「魯山人」、1920〜1930年代
管理No.190
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