最晩年作品。その形状は、古信楽の壷をもとに造形されており、伝統的な信楽焼の力強さを継承しつつ、魯山人独自の美意識が加えられている。特に注目すべきは、灰被りと鉄釉の打ち流しが生み出す強い景色である。この作品は、計算されたな灰被りの上に鉄釉が勢いよく打ち流されることで、対照的な色彩と質感が生まれ、ダイナミックな装飾効果を生んでいる。加えて、桧垣文の装飾が施されており、伝統的な意匠と偶然性の妙が見事に調和している点も特筆すべき点である。昭和30年頃は魯山人が自由な作陶をさらに追求していた時期であり、本作にもその創造性と審美眼が存分に発揮されている。単なる花生にとどまらず、一つの芸術作品として完成された、非常に趣向を凝らした逸品といえる。
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