魯山人が漆器で多く手がけた日月文の意匠を、磁器という新たな素材で表現した極めて希少な蓋付茶碗。赤呉須で全面を塗り上げた磁器素地に、金で大きく日を、背面に銀で月を配した構成は、まさに魯山人の自由闊達な美意識と革新性を体現している。蓋にも金銀彩で日と月を描き、器と蓋が一体となって調和するデザインは、彼の「用と美」の思想が結晶したものといえる。図録にもほとんど掲載例がなく、市場に現れること自体が稀であり、黒田陶々庵識箱を備えた本作は、魯山人の芸術性を物語る貴重な資料である。作品の放つ格調と気迫は、まさに目利きをも唸らせる真の逸品である。
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