本作のように銀彩と色絵を用いた長方鉢は数少なく、魯山人作品の中でも特筆すべき逸品である。まず注目されるのは、作品の基盤となっている備前焼そのものの完成度の高さである。良質な備前土味に加え、見どころとなる大ぶりの石はぜが器面の随所に現れ、焼締陶としてのみ見ても十分に鑑賞に堪える出来であったことが容易に推察される。通常であれば、この段階で作品として完結していても不思議ではないが、魯山人はそこにとどまらない。備前の荒々しくも深みのある表情の上に銀彩と色絵を重ねて格子文を描き出すという、素材の個性を大胆に組み合わせた手法がとられている。また備前ならではの土味の上に銀彩を施すことで、銀光が適度に吸い込まれ、マットで落ち着きのある渋い表情が生まれている。そこへ色絵の柔らかな発色が加わり、素朴さと華やかさが絶妙な均衡を保つ景色となっている。緩やかに反りをもたせた長方鉢の造形は、魯山人ならではの伸びやかさを備え、料理を受け止める器としての機能性と、造形作品としての完成度を高い次元で両立している。備前・銀彩・色絵という異なる要素を一器に凝縮しながら、決して過剰に陥らない統御力は、まさに魯山人芸術の真骨頂といえる。備前焼としても、装飾陶としても一級の水準にあり、これほど贅沢な工程と表現を惜しみなく注いだ作品は稀である。素材への深い理解と尽きることのない探究心が結実した、魯山人らしさの詰まった逸品である。w41.7 × d21.7 × h5.7cm 釘彫サイン「ロ」 1950年代
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