機能や形状
材質や地域
本作は、胴部に魯山人お得意のアヤメ文を大きく線彫りし、存在感を放つ逸品である。豊かな量感をもつ器体に沿って、アヤメの葉が生き生きとしなやかに伸び、花が静かに開く姿が、一気呵成の彫線で力強く表されている。箆や櫛を巧みに操る彫りには一切の迷いがなく、線そのものが植物の生命力となって器面に息づいている。口縁は、「柘榴口」と呼ばれる造形で、裂けて実をのぞかせる柘榴の果実の形に由来する。胴部の丸みと呼応しながら鋭く立ち上がるこの口作りは、本作の造形的緊張を決定づける重要な要素となっている。釉薬は織部釉が施されているが、焼成中の酸化還元の変化によって緑ではなく茶褐色へと窯変している。飴色を帯びた深みある発色が彫り文様の陰影を包み、しっとりとした古陶の趣と、魯山人ならではの伸びやかな装飾性が響き合い、独自の景色を生み出している。またこの窯変を偶然の結果としてではなく美として積極的に取り込む姿勢は、魯山人の審美観をよく示している。形・彫・窯変が一体となり、花入でありながら彫刻作品のような存在感を放つ本作は、強さと優美さを兼ね備えた逸品といえる。釘彫サイン「ロ」
8つの花弁がある柘榴口と言われる口造りが特徴の作品です。暗黄色の織部釉で素地に入れられた菖蒲文の陰刻文が力強く躍動しています。ちょうど中央部分に石膏型の跡があります。この時代の壺は室町時代の信楽を原型とした石膏型で作られたものが多く、逆に轆轤の仕事は少ないです。高台内は内側に凹んでいて植物の瓜を想像させられます。肩に「ロ」の刻銘があります。
管理No.572
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