機能や形状
材質や地域
本作は、魯山人が得意としたタタラ造りによる四方平向の十客揃である。タタラにした土に板を押し当てて成形しており、押し当てられた角にはエッジのきいた線があらわれている。また、四隅や縁はわずかに立ち上がり、独特のうねりと動きを見せている。四角い皿や平鉢であっても、一枚として同じ輪郭や曲線を持つものはなく、組物でありながら一客一客に個性が与えられている点も、本作の大きな魅力である。見込には、あやめが生き生きと線刻され、さらには魯山人が好んで用いた櫛目によって、風にそよぐ葉の風情を表している。櫛目は織部、志野、備前などの作品にも見られる魯山人得意の技法であり、本作でも細やかな線の重なりが、あやめの清々しい姿を見事に引き出している。魯山人作品の黄瀬戸は全体的に数が少なく、技法的にも難しいとされるが、本作では、黄瀬戸の油揚手、伊賀風の焼き上がり、さらにはタンパンの景色など、多彩な窯変が一組の中に展開され、十客それぞれが異なる表情を見せている。あやめは古くから邪気を払い、清浄さを象徴する縁起の良い植物として親しまれてきた。その凛とした葉姿と可憐な花は、日本人に初夏の訪れを感じさせる意匠の一つでもある。魯山人はその清々しい姿を、線刻と櫛目、そしてタタラ成形による力強い器形の中に取り込み、日々の食卓に季節の風趣をもたらす器として仕上げています。造形、線刻、櫛目、そして多彩な釉調の変化が高い次元で響き合った、魯山人の四方平向を代表する優れた十客揃の逸品である。高台に釘彫サイン「ロ」。
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