531.銀三彩花入(共箱)

機能や形状

  • 【花入】

材質や地域

  • 【銀彩】

531.銀三彩花入(共箱)

本作は、魯山人が晩年に手掛けた銀三彩による花入で、備前土の力強い土味に銀彩と鮮やかな色彩を重ねた、自由で華やかな表情が印象的な作品である。造形は、豊かに張った胴から長い頸がすっと立ち上がる、いわゆる「下蕪(しもかぶら)」を思わせる姿となっています。下蕪とは、蕪のように下部に量感をもたせ、そこから頸を立ち上げた花入の形で、本作も壺のような豊かな張りと轆轤目をもつ胴部に、口縁をわずかに開かせた長い頸を合わせることで、安定感がありながらも伸びやかな姿に仕上げています。こうした胴の量感と長い頸との対比にも、魯山人らしい堂々とした造形感覚が感じられます。技法にも大きな見どころがあります。まず備前土で成形・焼成した器体に銀彩を施し、さらに黄・緑・青などの色彩を点在させています。銀彩は長い年月の中で酸化し、銀色の輝きを残す部分から黒く落ち着いた部分まで複雑な色調へと変化しており、そこに三彩の鮮やかな色斑が重なることで、器面全体に奥行きのある豊かな景色が生まれています。色彩は整然とした文様として描かれるのではなく、小さな斑点のように軽やかに散らされ、その自由な配置が銀彩の表情と響き合っています。さらに本作を特別なものとしているのが共箱です。蓋裏には魯山人の筆で「寿老七十七めでたしく」と記されています。銀三彩は魯山人が晩年に手掛けた仕事であり、本作を制作した頃には魯山人自身も七十代でした。「七十七」という長寿を寿ぐ言葉が添えられていることから、親しい人物への祝いとして贈られた作品であったことが想像されます。こうした為書きを思わせる言葉が共箱に記されていることは珍しく、単なる箱書とは異なる温かみが感じられます。大切な相手の長寿を祝い、心を込めて贈った作品であったとすれば、魯山人自身も納得した出来の一作を選んだであろうことが想像され、その背景を知ることで本作の魅力はいっそう深まります。備前の土味を生かした下蕪を思わせる堂々とした造形に、銀彩の経年による深い色調と三彩の鮮やかな色彩を重ねた本作には、魯山人晩年ならではの自由で大胆な美意識が存分に表れています。さらに「寿老七十七めでたしく」という特別な箱書まで伴う、作品そのものだけでなく、その背景にも魯山人の人間味と心遣いを感じさせる銀三彩の逸品。高台に釘彫サイン「ロ」。蓋裏「寿老七十七めでたしく」(銀座黒田陶苑)

作者北大路魯山人
共箱
年代1950年代
サイズw15.3 × d15.3 × h21.9cm
価格(税別)26,200,000円

管理No.863

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