532.鉄釉束柴形水指(陶々庵箱)

機能や形状

  • 【水指】

材質や地域

  • 【鉄釉】

532.鉄釉束柴形水指(陶々庵箱)

本作は、魯山人が自ら収集し手元に置いていた桃山時代の古丹波《束柴水指》に学び、その特徴や雰囲気をしっかりと吸収しながら、魯山人ならではの造形へと昇華した、まさに「坐辺師友」から生ま
れた作品である。古丹波の《束柴水指》は、何本もの柴を束ね、中央を縄で結んだそのままの姿を器の造形へと取り込んでいます。本作、魯山人の《鉄釉束柴形水指》も同様に、器面全体に縦筋を刻んで束ねた柴を表し、胴の中央よりやや下に縄を巡らせ、胴紐のような効果を生み出しています。縄を器体のちょうど中央に置くのではなく、あえて少し下へずらしたことで、器体全体の造形と絶妙な均衡を見せています。そのわずかな位置の違いが全体を美しく引き締め、結び目の立体的な表現と相まって、力強い造形の中にも品格を感じさせる姿となっています。そこに深い黒褐色を呈する鉄釉をたっぷりと掛けることで、縦筋や縄の凹凸が一層際立っている。さらに、鉄釉を掛け残した下部には赤褐色の荒々しい土味が覗き見え、この黒褐色の鉄釉と赤褐色の土味との鮮やかな対比も相まって、重厚で力強い表情を生み出しています。魯山人は、優れた古美術を身近に置き、日々それを眺めながら美を学ぶことを大切にしていました。古人の遺した優れた芸術を、自らを高めてくれる「師」であり「益友」と捉え、そこから得たさまざまな示唆を自身の創作へと生かしていく。「坐辺師友」と呼ばれるこうした考え方は、魯山人のものづくりを理解するうえで非常に重要なものとなります。1996年に世田谷美術館で開催された「伝統と創造―魯山人とゆかりの名陶展」では、本作とともに、魯山人が実際に収集し手元に有していた桃山時代の古丹波《束柴水指》が紹介され、展覧会図録にも両作品が掲載されています。二つを見比べると、魯山人が古作を単に写したのではなく、その特徴や雰囲気を自らの中に取り込み、縄を配する位置や立体的な造形、鉄釉による重厚な釉調、荒々しい土味などを通して、自身の表現へと昇華していることがよく分かります。自らが愛蔵した古陶磁を「師」として身近に置き、そこから美を学び、その本質を自らの感覚で新たな造形へと昇華する。魯山人が大切にした「坐辺師友」という美への姿勢を、作品そのものから感じ取ることのできる逸品。高台に釘彫サイン「ロ」(銀座黒田陶苑)

作者北大路魯山人
陶々菴箱
年代1940年代
サイズw19.4 × d19.4 × h19.8cm
価格(税別)10,200,000円

管理No.336

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