542.備前土耳付甕(陶々庵箱)

機能や形状

  • 【壺】

材質や地域

  • 【備前】

542.備前土耳付甕(陶々庵箱)

本作は、魯山人が晩年に精力的に取り組んだ備前による、堂々たる量感と素朴で力強い造形が印象的な大甕です。幅47センチを超える大ぶりな器体は、底部から豊かに膨らみ、肩にかけて緩やかにすぼまりながら、大きく開いた口縁へとつながっています。胴の左右には、魯山人が手捏ねによって形づくった取手状の耳が力強く付けられています。土を握り、指で押さえながら形を整えた痕跡がそのまま残されており、魯山人の手の動きや指先の力までが伝わってくるようです。豊かに張り出した胴に、この大胆で存在感のある耳が加わることで、器全体に一層の力強さと造形的な変化が生まれています。器面には轆轤による成形の跡が自然に残され、とりわけ肩から口縁にかけて巡る幾筋もの轆轤目が、簡潔な造形に豊かな表情を添えています。大きく張り出した胴の量感に対して、口縁は薄くすっきりと仕上げられており、重厚な姿の中にも軽快さが感じられます。力強い耳の造作と自然な轆轤目とが相まって、土の持つ豊かな表情を生かした、魯山人らしい自由闊達な造形となっています。焼成による景色も本作の大きな見どころです。薪窯の焼成によって降り掛かった自然灰が溶け、器面には備前特有の胡麻の景色が豊かに広がっています。灰の掛かり具合によって生まれた濃淡は、淡い黄褐色から灰緑色へと複雑に移ろい、自然灰が織りなす多彩な色調と肌合いの変化が、大きな器面に奥行きのある表情をつくり出しています。さらに、温かみのある緋色を帯びた土肌との対比も美しく、変化に富んだ胡麻の景色が、堂々たる器体の魅力を一層引き立てています。また、口縁から胴にかけて走る大きな亀裂には、金繕いが施されています。広々とした大きなキャンバスを思わせる素朴な土肌に、金繕いの細い線が大胆に走り、まるで一筆の線描を加えたかのようなアクセントとなっています。自然灰による胡麻の景色に金の線が思いがけない変化と緊張感を与え、作品全体を一層印象深いものにしています。本作は、装飾を極力抑えた簡潔な造形でありながら、豊かな胴の張り、手捏ねによる力強い耳の造作、自然な轆轤目、そして濃淡豊かな胡麻の景色によって、見飽きることのない存在感を備えています。花を大胆に生ける大きな花器としてはもちろん、そのまま据え置くだけでも空間を引き締める力を持った作品です。備前の土味と薪窯の炎が生み出す豊かな胡麻の景色を存分に生かしながら、堂々たる量感と力強い造形、さらに広い器面を走る金繕いの線が独特の趣を添えた本作は、魯山人晩年の自由闊達な造形感覚をよく伝える、風格と存在感を兼ね備えた大甕の逸品です。胴下部に釘彫サイン「ロ」。口縁部から胴部にかけて大きな線状の金繕いあり(銀座黒田陶苑)

作者北大路魯山人
箱陶々庵箱
年代1950年代
サイズw47.1 × d41.3 × h30.2cm
価格(税別)4,500,000円

管理No.145

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